映像世界 最終章

f:id:tiheisen1839:20130106103932j:plain

映像世界 最終章


映像世界とは70年代を中心とした映像の時代のメディア論として読んだが、その中ではカメラなどの道具と、表現メディア(媒体)としての写真のかかわりなども様々な角度から取り上げられている。


また、この本には「引用の小冊子―W・Bを讃えて」という付録がついている。このおまけだけでなく、この本全体がベンヤミンのスタイルへのリスペクトといえるのかもしれない。


70年代に書かれた写真論だが、今読んでもソンタグの写真に関する様々な問いと、その洞察力はいささかも古くなっておらず、まさに写真論の古典といえるだろう。


カメラは重要性、興味、美についての公平な判断をする可能性を万人に拡げる玩具の機械であることで美的な現実感に道具を供給している。p178


美的なものと機械的なものの、これらの二つの態度は人々の状況についての矛盾した、両立しがたいほどの感情を生むように思えるが、それは公私を分離するような社会の構成員が共有し、生活する態度と期待されているものをそっくり特徴づける矛盾である。そしておそらくこれら相矛盾する態度で生きられるように、その両方に実に見事に適合する写真撮影ほどうまく私たちを準備(?)してくれる活動はないだろう。p179