2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

旅人かへらず

旅人かへらず 西脇順三郎 旅人は待てよこのかすかな泉に舌を濡らす前に考へよ人生の旅人汝もまた岩間からしみ出た水霊にすぎない

表層

写真は表層だけを写しとるはずだが写真を見ていると底の方からある感情のイメージが浮かび上がってくるそれは見る人が持つている過去の痕跡ではなく写真の内にすでに存在しているものだろう *少し前に書いたものをリサイクルしました

現代文明の悲惨なところ

染物屋の手 W.H.オーデン 中桐雅夫訳 詩人が詩を作るよりも、詩について書いたり語ったりする方がお金になるというのは、現代文明の悲惨なところである。わたしがこれまでにつくった詩はすべて好きだからこそ書いたのだ。一遍の詩ができると、それを売ろうと…

写 真

「写真」という谷川俊太郎さんの写真と詩で構成された本からピックアップさせていただきました。 1 どんな情景もどんなドラマも光と影に還元してしまうのが、 写真の魅力かと思う。 太陽がもたらした今朝の光が、人知のおよばない長旅をしてきていることを …

きみの胸の傷口は今でもまだ痛むか

「死んだ男」鮎川信夫 たとえば霧やあらゆる階段の跫音のなかから、遺言執行人が、ぼんやりと姿を現す。──これがすべての始まりである。 遠い昨日……ぼくらは暗い酒場の椅子のうえで、ゆがんだ顔をもてあましたり手紙の封筒を裏返すようなことがあった。「実…