対話編 その2  イメージを逆なでする 写真論講義 理論編 前川修  をながめる。

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対話編 その2  イメージを逆なでする 写真論講義 理論編 前川修  をながめる。


〇どんな本
●写真という現象をストレートに考えて行くという本ではなく、すでに書かれた、かなり古い写真論(と書いた人)を評論するという、言ってみれば「写真論」論という体裁の本。あとの方で様々な写真現象に言及したページもあるが、小難しく書いた随筆(試論レベルではない)のようだ。


〇面白かったか
●面白くはなかった、業界誌(紀要)に業界用語で書かれた文章が面白いことは少ないと思う。


〇なにが面白くない要因だと思うのか
●いくら写真を狂言回しにしているとはいえ、とても自由なマルクス主義思想家、プロフェッショナルな哲学者や社会学の代表選手を相手に評論するのはのはいろいろしんどいだろう。
そして、これらの人の肩の上に立って、写真という世界を多少とも新しい視点で眺めるのではなく、よく解らない主題と言葉では伝わらない。また、先行事例の研究は基本なんだろうけれど、同じ人ばかりが登場する手垢だらけの写真論ではなく、今現在の写真論や同時代の写真評論家を評論するという、危険なテーマも読ませてほしいところだ。


〇もっと具体的に
ブルデューのセクションの初めで「--ブルデューが写真論を構想するうえで影響を受けていたはずの--ロラン・バルトの写真論云々」という文章が目にとまったが、方法論が大きく違っているブルデューがバルトの影響を受けたとは考えにくいし、受けたはずであれば論拠を示さないと私の書く文章と同じように適当ということで、学術的にどうなんだと思う。


ブルデューの写真論(原題を直訳すれば「ある中間芸術-写真の社会的効用に関する試論」だそうだ。)は1965年にイーストマン・コダックハウスからの依頼でなされた共同研究で、本のスタイルがちがいすぎるとおもう。そして、バルトの明るい部屋は晩年の80年に出版された。バルトは写真が好きだったようなので、写真や映像に関する文章は多く、また、お二人ともコレージュ・ド・フランスの教授だったなどの関連がなかったとは言い切れないが、そこらあたりを教えてほしいところだ。


まぁ、ブルデューのこの本は社会学の道具や方法論がよくわかる、写真ということを置いておいても読みでのある本(古い本だが今でも本屋さんで新刊本が手に入る)なので、ピックアップされたのはうれしい。


いろいろな人名と引用がインデックスが必要なほど出てくるが、よく知らない誰それがこう言っていると言われてもはぁそうですかとしか言えないし、引用にも説得力がない。ベンヤミンの引用のように、引用文にベンヤミン印のマークがついて本筋がパワーアップすることもないので、今までの写真論を逆撫でするほどの自信のある議論ならば、ふわっとした言葉を羅列するのではなく、もうすこしシンプルかつ丁寧に説明され、書かれればよかったのではないでしょうか。


〇まとめて
●ほぼ読まないで言って申し訳ないのですが。いいことが書いてあるかもしれないのに、何が書いてあるのか理解できなかったのは残念でしたが、無理をして読んでも内容がなかったらもっと残念なので、これでいいのだとしておきます。