現代美術史 山本浩貴

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現代美術史 山本浩貴


羊頭狗肉


〇著者が伝えたいものがあるなら、現代美術史なんて本を売りたいだけのええ加減なタイトルにすべきではないでしょう。また、これは「正史」ではないなんてご自分で書かれていますが、なぜわざわざ言うのかよくわからないのですが、現代や美術に正史なんてものがあるはずもないので当たり前の話ではないでしょうか。


□中身


〇各章は学生さんのレポートのようなコピペされたような文章が続きますが、自分の解釈をサポートするための引用ならまだわかりますが、文芸評論家や美術評論家の解釈をそのままコピペしてどうしたいのでしょうか。
「レ二・リーフェンシュタールとドイツナチズム」の章をピックアップすると、戦争が終わってから撮影された「ヌバ」という作品を過去だけで断罪する姿勢はやはりアホちゃうと思ってしまいます。ソンタグの「ヌバ」に関する評価もファシスト的芸術なんてレッテルを張るなどおかしいと思いますが、まだユダヤアメリカ人としてリーフェンシュタールに厳しくなるのは理解できますし、写真もちゃんと見ておられるようですが、著者はテキスト(写真)をちゃんと読み込みもしないで、ソンタグや他の人の尻馬に乗っているだけという印象を持ちました。


〇重層的に見る必要がある問題だと思いますので、参考文献を一冊だけ上げて置きます。


リーフェンシュタールのナチ責任を正当にも非難することができたとしても、その際、同時に、この点(悲しみ悼む心の喪失)の自己省察の視点が抜け落ちているなら、それは一種の心理的防衛機制の投影にすぎないことになりかねない。彼女に対して政治的責任を追及することによって、ひそかに自己自身の免責を試みようとしてしているのかもしれないのだから。 ナチ・ドイツと言語 宮田光雄 Ⅱ映像の言語 2レ二・リーフェンシュタールの「意志の勝利」 p84

 

□まとめると


トピックを詰め込みすぎだし、解釈もステレオタイプで面白くないし、紀要にでも載せればいいような文章を新書にしたらアカンでしょうということです。