図説 写真小史 ウォルター・ベンヤミン

図説 写真小史 ウォルター・ベンヤミン


ベンヤミンさんの他の文章、例えばパサージュ論などを読んでいてもその発想と発見に古さを感じることはありませんが、写真関連の文章 というかメディア論は古くなっているように感じるのはなぜなんでしょうか。


もっとも、これらの文章の書かれた30年代はじめは、カメラで言えばライカⅠ(A)型の時代で写真の大衆化はまだまだ来ておらず写真の黎明期であることを考えると、時代に先駆けた素晴らしい発想だとしか言えない歴史的な文章ではあります。


そして、文章は時代に追い越された感があるものの、この本に多く収録されているむかしに撮られた参考写真は古くなっていません。写真が古くならないのは撮られた時からむかししか写らない特性のためなのかもしれません。


この文庫にはアジェの最初の写真集の序文(これは面白かった)やザンダーの写真集の序文が入っていて、この時代がよくわかりますが、肝心の写真小史は全体のボリュームは三分の一もないものなので、まあ、羊頭狗肉の本だとは思いました。