コミュニケーションを断絶しようという意志

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芸術は呪術である。
人間生命の根源的混沌を、もっとも明快な形でつき出す。
人の姿を映すのに鏡があるように、精神を逆手にとって呪縛するのが芸術なのだ。
ところで理解することを、あくまでも拒否することが、また芸術の本質である。
たしかに芸術家は己の世界を他におしつけ、征服しようといういう強烈なダイナミズム、権力の意志がある。
芸術家のロマンティスムだ。
しかし、この帝国主義にも大きな矛盾がひそんでいる。
実は、それと同時に己を絶対に理解させたくないという意志がはたらくからだ。
己を理解させようという情熱と、それにもまして、コミュニケーションを断絶しようという意志と。
私が芸術家は好かれてはならない、嫌われなければいけないと力説するのは、すこしも逆説ではなく、この危機を平明な日常語で指摘したにすぎない。


岡本太郎