視覚のヒロイズム

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視覚のヒロイズム  のチャプターを読む (再アップ)


ルフレッド・スティグリッツは1893年2月22日、彼の有名な写真「冬の五番街」を撮ろうとして、「ここぞという瞬間を待つて吹雪の中を三時間も立ち尽くしたと、誇らしげに報告している。
ここぞという瞬間は事物(とりわけだれでも眼にしているもの)が新鮮に見えるときである。P96


しかし写真的に見ることは、被写体であろうと技術であろうとその新しいショックによってたえず更新され、日常的な視覚を犯しているという印象を生み出さなくてはならないのである。というのは、写真家たちによる暴露の挑戦を受けていると、見ることは写真に順応する傾向があるからである。p105


実際、写真の収めた勝利で一番長持ちするんものは、つまらないもの、ばかげたもの、老朽化したものに美を発見するその適正であった。少なくとも現実のものには哀感がある。そしてその哀感が美である。(まずしいものの美はその一例)。p108


視覚のヒロイズムとは何であるかはよくわかりませんが、この章では前章に引き続いいて写真そのもの、特に写真を読むということはいかなるものであるかへのアプローチがされているようです。


この章はアーバスの写真をテキストにしたような、テキストそのものを読み込むのではなく、かなり広範囲な写真史的なところから資料を集め、読み込み、表現するものとなっています。


ソンタグのテキストを読み込む力と、そこからなにものかを取り出す才能は大したもので、その良いところがこの章に出ているようで、楽しく、面白く読ませていただきました。