自画像のゆくえ 森村泰昌
社会的似姿への転換
それまでの様々な業界のスター(世の中に知られている人たち)本人に似せるというものに行き詰まりを感じたのかどうかは知りませんが、社会そのもの(社会現象)に似せるもの、たとへば防衛省バルコニーの三島由紀夫になった時、新しい(美術としての)展開が生まれることはなく、美術作品としてもどちらかというと陳腐な面白くないものが出来上がったようです。
毒はどこへ
美術家としての能力と、実作者の文章作家としては優れたものを持っている森村さんも、たぶん思想家としてはどうということのない存在であるので、言葉そのもので社会的な問題に切り込むほど毒は薄まり面白くないものになってしまうようです。
この本そのものは文献へのアプロ―チなど力のはいったものですが、森村さんの過去の文章のリライトになっているのは残念なところです。