〇タイトルてなんだ
美学者の佐々木健一さんによるとタイトルとは「この作品はこう読めという、作者からのメッセージ(うろ覚え)」だそうだ。
どうやらタイトルはその作品のコンセプトをことばにしたもののようです。
そして、シンディ・シャーマンさんの作品にはタイトルはなく、通しナンバーがついているが、これは写真そのものがコンセプトなのでタイトルはトートロジーになるというか、必要ないということだというのをどこかで読んだ。これも一理あるなぁと思ったけれど、シンディシャーマンさんの写真はきっちりコンセプトを決めてから、作っていく行く写真だから、写真がコンセプトなのは当たり前なのだろうが、スナップ写真ではまとめるときのキーワードとしてタイトルがあるのはいいのではないのでしょうか。
また、上田義彦さんであれ、篠山紀信さんであれ、広告写真にはタイトルはない、これは商品そのものがタイトルということで、写真の作者からのメッセージはないということでしょう。
〇では、サンプルを作ってみよう。
お題となる写真は上にある私の撮った写真。
①堺 港
2008年に堺港で撮った写真で海への広がりと、工業ゾーンとがミックスされているように感じたので撮影したもの、「堺 港」という愛想のないタイトルは好みのスタイルだ。
そして、イメージのふくらみは期待できないものの、堺という地名が入っていることによって、言葉の強さは担保できるだろうう。
②プラント
対岸に見える生垣のある工場をそのまま言葉に置き換えてみました。
さくらや富士山という言葉ようにイメージの拡散の極限にある言葉に近く、読んだ人が何かを喚起されることはないだろうというタイトル。
③音もなく
なんのことかわからないので、読んだ人はこれはいかなる状態のことなのかと思って、写真をちゃんと見てくれる効果は期待できるような気はする。
昔、心象風景というタイトルの写真を見かけたが、これに類するものかもしれない。
これらのサンプルのタイトルは誰かに何かを伝えようとする意識が欠けていることだけでも失敗作だとは思うが、サンプルということでよろしく。
そして、やっぱり、タイトルはメッセージであると思う。
〇言葉に定着させる
ブックならともかく、一葉の写真にタイトルをつけることはあまりしないが、これはこれで難しい。
自分のつけたタイトルを振り返ってみると、ロケーションやイメージを概念化して漢字二文字にまとめて終わりというタイトルをつけたものが多い。また、欧文を使うことははない、欧文は手あかにまみれていない新鮮な感覚を演出できるが、おっさんの平凡な写真にはあまり似合わない。
タイトルをつける写真や展示を撮っている時に持った思い(コンセプト)を、言葉に定着させる作業は自覚的に写真を撮る作業の一環として必要なものだと思った。