2020-07-17 ああかけすが鳴いてやかましい 旅人かへらず 西脇順三郎 旅人は待てよこのかすかな泉に舌を濡らす前に考へよ人生の旅人汝もまた岩間からしみ出た水霊にすぎないこの考へる水も永劫には流れない永劫の或時にひからびるああかけすが鳴いてやかましい時々この水の中から花をかざした幻影の人が出る永遠の生命を求めるは夢流れ去る生命のせせらぎに思ひを捨て遂に永劫の断崖より落ちて消え失せんと望むはうつつさう言ふはこの幻影の河童村や町へ水から出て遊びに来る浮雲の影に水草ののびる頃